市場の見方と通貨特性
こんにちは、アダムです。
投資を行う際に最も重要なのは、市場選びです。
どの商品にどれだけの資金を投じ、どれだけのリターンを望むか。
そして、どれほどのリスクを許容するかという設計書の作成です。
いつも、私はこの事前作業に多くの時間を費やすのですが、
前提条件として、「手法」を持っていないといけません。
簡潔に言えば、投資とはお金を得るための行為で、
それを叶えるためのツールが「手法」です。
先ずは、自らの手法が、投資先の市場にマッチしているかを
知る必要があります。
例えば、為替を投資先として選択した場合、
やはり、重要なのは通貨選びということになります。
短期目線か長期目線か、選択肢はいくつかあります。
短期だと、それなりにボラティリティの大きい通貨が望まれます。
GBP/JPYやEUR/JPY等が、クロス円代表で、デイトレーダーに親しまれます。
一方、ボラティリティが大きいということは、値動きが激しいということで
言い換えると「リスクが高い」ということです。
そうなると、初心者はリスクが低く分かり易いものを選択します。
USD/JPYがその代表です。
まずは、この程度のことを考慮して投資を始めようと思うのですが、
果たして正しいのでしょうか?
この辺に疑問を持つことが「考察」です。
下図のようなものを作って、通貨ごとの特性を調査します。
USD/JPYとEUR/JPYのボラティリティ分析です。
集計期間は、2010年1月~2017年5月となります。
約7年分の日足を全て並べて、高安を確認すれば出来上がります。
ロウソク足で、1,900本程度なので簡単です。
100pipsのラインに赤線を引きました。
これで、1日100pipsの動きがあった日の割合が視覚的に確認可能です。
これを見ると、USD/JPYと比較すると、EUR/JPYの方が遥かにボラティリティが
大きいというのが確認できます。
やはり、短期向きという見解は合っているように思えます。
(高ボラの方が、デイトレ向きという風潮が正しいとすればですが。)
さらに、調査を進めます。
集計データより以下のことが分かります。
USD/JPY(2010/1/4~2017/5/30)
1日の平均値幅 :86.44pips
1日の値幅が50pips以下 :全体の26.15%
1日の値幅が60pips以下 :全体の37.08%
1日の値幅が70pips以下 :全体の47.95%
1日の値幅が80pips以下 :全体の56.92%
1日の値幅が90pips以下 :全体の65.23%
1日の値幅が100pips以下:全体の73.03%
1日の値幅が101pips以上:全体の26.97%
集計期間中の陽線の本数:957本
集計期間中の陽線の本数:972本
EUR/JPY(2010/1/4~2017/5/30)
1日の平均値幅 :125.78pips
1日の値幅が50pips以下 :全体の5.81%
1日の値幅が60pips以下 :全体の9.54%
1日の値幅が70pips以下 :全体の15.60%
1日の値幅が80pips以下 :全体の23.69%
1日の値幅が90pips以下 :全体の31.73%
1日の値幅が100pips以下:全体の41.01%
1日の値幅が101pips以上:全体の58.99%
集計期間中の陽線の本数:986本
集計期間中の陽線の本数:943本
色々気づけますが、先ず注目したい特徴は1日当たりの値幅です。
USD/JPYは、50pips以下で終始する日が全体の約26%、
また、101pips以上で終始する日が約27%となります。
つまり、全体の半分をこの値幅が占領することになります。
その他の値幅は、満遍なく分散しています。
対して、EUR/JPYを見てみます。
100pips以下の値幅で終始する日は、全体の40%です。
一方、101pips以上の値幅で終始する日は、全体の60%程度となります。
USD/JPYは値幅の上下に中心部分が存在し、EUR/JPYは値幅が大きいところに
中心が存在しています。
私が評価する場合、USD/JPYのチャートで最もコアな部分を
50pips以下と100pips以上のロウソク足に絞ります。
対して、EUR/USDのチャートで最もコアな部分は101pips以上の
ロウソク足に絞ります。
※ひげも含んでいます。
それ以外は、ノイズです。
続いて、陰線と陽線の数を確認します。
概ね、チャート上には陰陽ともに同数描写されたことが分かります。
そうすると、USD/JPYに比べ、EUR/JPYの方が大きな値幅で陰陽が
並んでいたのだろうというのがイメージ出来ます。
これは、中大規模のトレンドが継続しやすいことを示唆します。
さて、翻って最初のテーマに問題を帰することにします。
「通貨特性」
EUR/JPYが、デイトレに向くのか否か?
単に、日々の値幅だけを見れば、確かにボラティリティが大きく
取りやすいかもしれません。
一方、USD/JPYは相場の中心が低ボラ側に偏っており安定しています。
この結果は、通貨が投資の向き不向きを決めているわけではなく、
手法によってそれを決定する必要があることを強くフォローする
ことになりました。
・EUR/JPYでは、低レバで大きな値幅がターゲット
・USD/JPYでは、高レバで小さな値幅がターゲット
このような過程を経て、手法とは設計されていきます。
どうやら、リスクとは、通貨ではなく手法に宿るようです。
どこかの誰かはこう言います。
「何となく、どの通貨でも同じレバレッジで取引してください。」
「このEAは100万円に対して、このロットで取引してください。」
レバレッジとは、そのままリスクであり、その評価とマネジメントは
資金によって決めるものではないということです。
デジャヴの様に繰り返しますが、投資の肝とは「手法」です。
100万円あれば安全や、1,000万円あれば安全というような
資金の多寡でリスクをコントロールするようなやり方は
必ず破綻するので覚えておいて損はありません。
これを、商品にして資産運用と名付けて売りつけるのが”ナンピンマーチン”です。
ただし、ナンピンマーチンも上記のような分析に基づき、正しく設計書を作れば
十分に利用可能なツールになります。
手法と呼ぶには拙いですが。
それでは、アダムでした。